シチリア島タオルミーナ近郊、エトナ山北部の自然派ワイナリー｜フランク・コーネリッセンの出発点

シチリア島東岸、古代ギリシャ人によって築かれた街タオルミーナから直線距離で22km。エトナ山（標高3326m）の北部に位置するパッソピッシャーロに、フランク・コーネリッセンのワイナリーはあります。彼はかつて、ベルギーやオランダにワインを輸出する仕事や、語学力を活かしてインポーターにワイナリーを紹介するエージェント業を行っていましたが、2001年ヴィンテージから、自ら理想とするブドウ栽培とワイン造りを開始しました。
エトナ山は、地中海最大の活火山で、噴火活動はおよそ50万年前から始まったと推測されています。現在でも数年ごとに小〜中規模の噴火が繰り返されており、1600年代の大噴火では、カターニャ市の半分が壊滅し1万人以上の死者を出すなど、大きな被害をもたらしてきました。それでもなお、現在のシチリア島では全人口の約25％がエトナ山の裾野で暮らしており、住民にとってこの地は危険な場所というよりも、農業や観光など様々な分野において重要な役割を果たしている地域となっています。

エトナ山の豊かなテロワールと気候特性｜コントラーダの個性を引き出すブドウ栽培

エトナ山の火山性土壌は水はけが非常に良く、標高が高くなるにつれて昼夜の寒暖差が大きくなり、さらに山から吹く乾燥した風が一年を通じて畑に吹き抜けるという、農薬に頼らずにブドウを育てるのに適した条件が整っています。中でも北部は、他のシチリアのワイン産地と比べて降水量が倍近くあり、その雨は浸透性の高い溶岩によって濾過され、地下水脈を形成しています。このような特異な自然条件に加え、フィロキセラ以前の古木が今も残されているという点に注目したフランクは、標高や方位によって気候や土壌条件が大きく異なるこの地域を、ブルゴーニュのコート・ド・ニュイや、ピエモンテ州のバローロのように、単一畑（コントラーダ）ごとの個性を活かした赤ワイン造りに最適な土地と見なしています。
栽培は、当初の1ヘクタールから始まり、徐々に拡大。現在では総面積で24ヘクタールを超えています。13ヘクタールは伝統的なアルベレッロ仕立ての古樹の畑、9ヘクタールは近代的な畝に仕立て直された古樹の畑で構成され、さらに約2ヘクタールにはオリーブの樹が植えられています。そのほか一部の土地には果樹やハーブが植えられ、森もそのまま残されています。このような環境の中で、自然の生態系が本来持つ複雑性を回復させることを目指し、野生のハーブや花々、雑草との共生、在来品種の果樹の栽培、ミツバチの飼育などが行われています。植樹には台木を使わず、自根のブドウの枝を選抜して苗木とし、ブドウ畑およびその周辺の土壌には、極力処理を施さないことを基本としています。ただし、必要に応じて耕作や硫酸銅の散布を行うこともあります。

エトナの風土を表現する自然派ワイン造り｜丁寧な手作業と最小限の介入

エトナのコントラーダの個性を余すところなく表現するために、フランク・コーネリッセンでは新しいヴィンテージの始まりに厳格な剪定を実施。徹底的に収量を制限し、特に重要なブドウは1株あたり300〜600gにまで抑えられます。収穫期には、房の先端を切ることで熟し具合を均一にする「摘果作業」が行われ、傷んだ粒や熟しきれなかった粒は一粒ずつ手で取り除かれるなど、極めて丁寧な作業が実践されています。
完熟したブドウは状態の良いものを選別し、除梗された後、小さな樹脂製タンクでマセレーションとアルコール発酵が行われます。乳酸発酵を経た後、圧搾し、グラスファイバー製のタンクで熟成されます。これらの醗酵・熟成容器は、ワインへの影響を最小限に抑える素材が選ばれており、2018年からはごく少量の二酸化硫黄が添加されるようになりました。年間の生産量は約12〜15万本に限られていますが、その品質の高さと土地の個性を映し出すスタイルにより、世界中のワイン愛好家から高く評価される自然派ワインとなっています。

このワインの特徴は

2003年からコンタディーノ(農民)の名前で親しまれてきたワインは、2016年が最後のヴィンテージ。2017ヴィンテージからはススカール ロッソと名前が変わりました。
コンタディーノをリリースするタイミングで、既にドイツにコンタディーノという名前のワインがあることを知っていたフランク。その後も世界中に多くの「コンタディーノ」が存在することを知り、より自分らしいネーミングに改名することを決めました。
ネレッロ マスカレーゼを主体に、ネレッロ カップッチョ、ミンネッラ、アリカンテ、その他フランス系品種を混醸した赤ワイン。丁寧に除梗、軽く圧搾し、本格的収穫の前に少量の潰したブドウの自家醗酵種(Pied de cuve)と共に、30日間のマセレーションとアルコール醗酵を行う。2500～7000Lの様々なサイズのグラスファイバー製のタンクで熟成を行っています。