酸化防止剤とはいったい何?
自然派ワインを知る上で、避けては通れない「酸化防止剤」の話。
日を追うごとに関心が高まっているのを、現場を通して感じています。
飲食にかかわる方は、今後さらにお客様への情報提供が必要となって来ることでしょう。
そんな時にお役に立てばと思い、詳しく書いてみます。
目次
酸化防止剤とはいったい何?
このテーマ、実はワイン通信のvol.2~4に書いておりました。
おかげさまで、この通信の購読者数もその後さらに増え、
改めてご質問いただくこともありましたので、再度取り上げていこうと思います。
(2021年11月加筆)
1.まずはじめに。
2021年現在、食品添加物表示について管轄しているのは「消費者庁」です。
食品添加物表示に関する情報(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/
食品表示の内容を正しく理解するための“食品添加物表示に関するマメ知識”
そこでは食品添加物に対して、目的に応じた「用途名」と「物質名」を
併記しなければならない、と定めています。
例えば、
—–
品 名 ワイン
酸化防止剤(亜硫酸)
—–
と表示があった場合、
用途名:「酸化防止剤」
物質名:「亜硫酸」
となります。
2.亜硫酸とは?
では改めて「亜硫酸」とは一体どういう物質でしょうか?
「二酸化硫黄:SO2」+「水:H2O」→「亜硫酸:H2SO3」
ワイン業界ではよく「SO2(エスオーツー)添加/無添加」と表現する事が多いのですが、
SO2を添加したワインの中には「水分」がありますから、
結果的に上の化学式の通り「二酸化硫黄」と「水」の化合物である亜硫酸となります。
硫黄と言えば、温泉を思い出しますね。
3.なぜ添加するの?
ワインは通常、自然環境の中で発酵・醸造されます。
その空気中には、ワインの異臭や劣化の一因となる不良な微生物
(カビ、ウイルスなど)も存在しています。
(ご家庭でご飯やパンを数日ほおっておくと、カビが生えますよね。)
これらが発酵・熟成期間中のワインに混入・増殖されてしまうと、
せっかく苦労して造った本来美味しいはずの風味が台無しになってしまいます。
そうなっては、元も子もありません。
ですから、ワイン造りに対して不都合な微生物の増殖を抑えるために
酸化防止剤を添加するのです。
4.使用量に規定は有るの?
添加物である酸化防止剤の使用量については、厚生労働省により「一日摂取許容量※」
としてきちんと法律で定められています。
(※生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量)
各国で規定が異なりますが、日本の果実酒に対する
亜硫酸最大含有量規定は350mg/Lまでとなっています。
その規定内でワインの「醸造過程」・「瓶詰め時」にそれを入れたものは、
酸化防止剤を添加したワインです。
5.酸化防止剤【無添加】なら、表示しなくてもいいのでは?
おっしゃる通り。
無添加=人工的に入れていないならば、表示義務は本来無いはず。
しかしながら、ここからが本格的なお話。
「二酸化硫黄:SO2」はワインの酵母が自ら作りだすものでもあるのです。
ワイン酵母(サッカロミセス)は、ぶどうの糖分を食べて
アルコールと二酸化炭素に分解します。
しかしながら、酵母自体はアルコールが増えすぎると生きていけなくなるので、
発酵過程において、アルコールと他の微生物から身を守る為に、
硫黄を作りだすのです。
この酵母自体が造り出した硫黄(S)が酸素(O2)と結び付き、=SO2(※1)
さらに液中の水(H2O)と結び付くと、
「二酸化硫黄:SO2」+「水:H2O」→「亜硫酸:H2SO3」
となるのです。
この量は、ごく微量で人間が感知できないほどだと言われています。
もうお分かりですね。
つまり、酸化防止剤無添加であるにもかかわらず、
ラベルに「酸化防止剤」と書かれている場合は、このケースに当てはまるのです。
そういった意味ではワインである限り、
亜流酸は含まれている可能性があるといえるでしょう。
6.まとめ
いかがでしょうか?
今まで気にもしなかった、思っていたことと違っていたなど、いろいろなご意見があることでしょう。
消費者庁の「食品表示法等(法令及び一元化情報)」は、こちらのリンクから詳細がご覧いただけます。
ぜひ参考にしてみてください。
ハウディでは酸化防止剤無添加のワインを多数取り扱いしています。
(※1)2021年7月7日15時まで誤表記がございました。
誤:「この酵母自体が造り出した硫黄(S)が二酸化炭素(O2)と結び付き、=SO2」
正:「この酵母自体が造り出した硫黄(S)が酸素(O2)と結び付き、=SO2」
ここにお詫びするとともに、正しい表記に変更しております事ご報告いたします。