【オーストリア・カルヌントゥム】若き当主ヨハネス・トラプルが継ぐ伝統と革新

オーストリアのワイン産地カルヌントゥムは、ウィーンの東側、スロバキア国境まで広がる丘陵地帯に位置しています。このエリア内の、ノイジードラーゼ湖の北側にある小さな村シュティックスノイジードルに、Johannes Trapl（ヨハネス・トラプル）のワイナリーがあります。当主ヨハネスは、「No Added Nonsense / ナンセンスを追加しない」をモットーに、頑固たる信念と行動力を持つ生産者です。祖父の代からワイン造りを行う複合農業を営む両親の元で育ち、20代半ばにワイン造りの道を選びます。クロスターノイブルクの専門学校を卒業後、カリフォルニアのカルディナーレ・ワイナリーで実務経験を積み、その経験を経て、2003年に両親から家族の財産と歴史を受け継ぎました。

エレガンスを追求！銘醸畑「シュピッツァーベルク」とブラウフレンキッシュの成功

家族のワイナリーを継いだヨハネスは、同時期にカルヌントゥムでエレガント・ブラウフレンキッシュの代名詞的存在であるMuhr-van der Niepoort（ムアー・ファン・デア・ニーポート）でも働き始めました。彼は当主ドルリ・ムーアの元で、このエリアの銘醸畑「Spitzerberg（シュピッツァーベルク）」の再建と復興に尽力し、シュピッツァーベルク・ワイナリー協会の共同創始者となります。そして2004年、20haある畑のうち5haを所有する機会に恵まれました。この年の葡萄で作られた1等級のブラウフレンキッシュは、オーストリア国内で数々の賞やトロフィーを獲得し、ヨハネスを一躍注目の生産者へと押し上げました。シュピッツァーベルクは乾燥した石灰岩土壌が特徴で、ここで育つブラウフレンキッシュは、繊細でシルキーなタンニン、豊富なミネラル、そしてフレッシュさを備え、長期熟成にも適した特別なワインとして高く評価されています。

【Demeter認証】自然と共存するバイオダイナミック農法と哲学

現在、約23ヘクタールを所有するヨハネスの畑は、2010年にオーガニック認証を初めて取得し、2016年にはバイオダイナミック農法で栽培、2019年にはDemeter（デメター）認証を得ています。彼は計測器を使わず、自ら葡萄を食べて熟度とフレッシュさを見極めて収穫のタイミングを決定します。興味深い手法として、大きな樽で葡萄を足でプレスすることでマセレーションの時間を短縮し、自然酵母による受動的な発酵を促しています。発酵プロセスに時間をかけ、無清澄、無濾過、亜硫酸無添加（またはボトリング時にごく少量）という、モットー通りの自然なワイン造りに取り組んでいます。さらに、家族が営む複合農業の一環として、羊を畑に放牧することで除草や土壌の健康維持を行い、テロワールに良い影響を与える循環型農業を実践しています。彼は、自然と共存した持続可能な生活を目指し、日々のワイン造りを続けています。

このワインの特徴は

少し濁りがあるライトイエロー。青りんご、グレープフルーツ、ライム、ハーブ、白い花の香り。果実味は柔らかく、ライトで、まろやかな口当たり。酸が溶け込み、ミネラルは豊富で余韻にも長く続きます。時間が経つと蜜蝋のような甘みも少し広がります。気楽に飲めて、様々な食事に合わせやすく、フレンドリーなワインです。
手摘みで収穫。除梗せず、全房にてフットプレス。ステンレスタンクにて12-15日間自然発酵、マロラクティック発酵。ステンレスタンクにて6か月熟成。無清澄、無濾過、ボトリング時、ごく少量の亜硫酸を使用（10mg以下）。